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PMMとPdMの境界は「誰が決...

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2026/9/16 07:52

PMMとPdMの境界は「誰が決めるか」ではない——実務で揉める5つの場面

リリースまで残り2週間。PdMが書いたリリースノートには、仕様の説明が正確に並んでいる。PMMは「この文面では、商談で他社との違いが伝わらない」と書き直しを申し出る。PdMは「内容は正しいはずです」と譲らない。どちらも間違っていない。議論は「最終的に誰が決めるのか」に移り、役割分担表が開かれる。——それでも、次のリリースでまた同じ会議が開かれる理由がわからない。

「PMMとPdMって、結局どっちが決めるんですか。」

PMM(Product Marketing Manager/プロダクトマーケティングマネージャー)を置いたばかりの組織から、繰り返し届く質問です。

まっとうな疑問です。ただ「PdMは何を作るか、PMMはどう届けるかを決めます」と返しても、翌週の会議は変わりません。揉める原因の多くは、決定権の曖昧さではないからです。

日本PMM市場レポート2026では、「届け方」に関する組織課題として「責任の所在が不明確」を挙げた企業が44.6%にのぼりました(出典:日本PMM市場レポート2026/プロデリア・パートナーズ)。ただ、責任の所在を表にしても揉め事が消えないことは、多くの現場がすでに経験しています。

本記事では、PMMとPdMが実務で揉める5つの場面を描き、共通する構造を研究と調査データから取り出します。役割そのものの比較は「PMMとPdMの違いを徹底解説」に譲り、ここでは「役割を理解しているのに、なぜ揉めるのか」に絞ります。PMMを目指す人が最初にぶつかる壁の正体です。


1. そもそも、PMMとPdMの違いはどこにあるのか

PMMとPdMの違いは、PdMが「プロダクトそのもの」を育てる責任を負い、PMMが「プロダクトが市場で選ばれる状態」をつくる責任を負う点にあります。

PdMは、どの課題を解き、どの機能をどの順で作り、どう改善するかを考えます。PMMは、誰に向けてどんな価値として位置づけ、どう語れば選ばれるかを考えます。

違いは「思い浮かべる顧客」にも表れる

PdMの重心は、すでにプロダクトを使っている顧客にあります。PMMの重心は、比較検討中の顧客、他社を選んだ顧客、導入を決裁する人にあります。

同じ「顧客」という言葉を使いながら、二人が思い浮かべている人物は、しばしば違います。

役割を知っていても、分担は曖昧なまま

日本PMM市場レポート2026では、プロダクトを「つくる役割(PdM/開発)」と「届ける役割(マーケ/営業/PMM)」の分担がどの程度明確かを尋ねたところ、5段階評価の平均は2.4で、56%が「不明確」側に回答しています(出典:日本PMM市場レポート2026/プロデリア・パートナーズ)。

また、自社で特に重視している業務として「プロダクトロードマップへの関与」を挙げた回答は17.5%で、「GTM戦略の設計」の56.6%とは大きな開きがあります(同調査)。届ける側の関心が市場投入に寄り、プロダクトの意思決定の上流と距離がある。この配置が、揉める場面の下地になっています。


2. PMMとPdMが実務で揉めやすい、5つの場面

PMMとPdMが揉めやすいのは、リリース文面、失注理由の扱い、発表日、料金プラン、顧客調査の解釈という、プロダクトと市場が接する5つの場面です。心当たりがあるかどうか、照らし合わせてみてください。

場面①:リリースノートの文面を、誰が書くか

「内容はすべて正確に書いてあります。これ以上、何を足すんですか。」

PdMが書く文面は、仕様として正確です。一方でPMMが気にするのは、他社と見比べている顧客がその文面から違いを読み取れるかどうかです。

揉めているのは言葉の好みではありません。この機能が誰のどんな場面のためのものか——その合意が、文面を書く段階で初めて問われているのです。前提が揃わないまま赤入れを重ねるため、議論は「誰の文面を採るか」という決定権の話へ流れていきます。

場面②:失注理由が、ロードマップ会議で「一件の要望」に縮む

「この3ヶ月で、同じ連携機能がないことを理由に4件負けています。」

「ただ、既存ユーザーの利用状況を見る限り、その領域はほとんど使われていません。」

どちらも事実ですが、見ている母集団が違います。利用状況に現れるのは、買って使っている顧客だけです。連携機能がないことを理由に他社を選んだ顧客は、そのデータに一度も登場しません。

失注の事実は、構造上、プロダクト側のデータには映らない情報です。それが「営業が拾ってきた個別要望」として扱われると、件数の少ない声として優先度が下がります。PdMの判断が誤っているのではなく、判断の机に載る材料が最初から偏っているのです。

場面③:「開発が終わった日」と「発表できる日」がずれる

「来週にはリリースできます。なぜ3週間も待つんですか。」 「営業への説明と、既存顧客への案内が間に合いません。」

PdMにとって、完成した機能を寝かせるのは価値を遅らせる損失です。PMMにとって、準備なしに出した機能は誰にも気づかれず埋もれる損失です。

厄介なのは、発表日の議論がたいてい開発完了の直前に始まることです。その時点では、どちらかが譲る以外に選択肢がなく、声の大きい側の日付が採用されます。

場面④:新機能を、どの料金プランに入れるか

「全プランに開放したほうが、使われて定着します。」 「上位プランに入れないと、アップグレードする理由がなくなります。」

PdMは利用の広がりを見ており、PMMは料金体系の中での意味を見ています。価格・パッケージングは、日本PMM市場レポート2026でも26.5%が自社で特に重視する業務に挙げている領域です(同調査)。

ここで起きがちなのは、プランの割り当てが仕様確定後に、事務的に決められることです。どのプランに入るかで、その機能が「誰のための機能か」が事後的に決まってしまいます。

場面⑤:「顧客の声を聞いてきた」が、二つある

「ユーザーは、とにかくシンプルな画面を求めています。」 「でも比較検討の場では、機能の多さで選ばれています。」

PdMはユーザーから日々の操作の困りごとを、PMMは決裁者や失注先から選んだ理由・選ばなかった理由を聞いてきました。BtoBでは、使う人と買う人が別人であることは珍しくありません。

どちらも正しい顧客の声です。しかし企画会議では、どちらが本当の声かという争いになります。揉めているのは解釈ではなく、誰に聞いた声なのかが共有されていないことです。


3. 「誰が決めるか」を決めても、揉め事が減らない理由

決定権を線引きしても揉め事が減らないのは、揉める原因が権限ではなく、部門ごとに異なる「ものの見方」にあるからです。製品開発の研究は、30年以上前からこれを指摘しています。

背景

組織研究者のデボラ・ドハティは1992年、大企業の新製品開発で、技術と市場の可能性がなぜうまく結びつかないのかを調べました。成功する製品には両者の結びつけが欠かせないのに、開発者はそこで繰り返しつまずいていたからです。

研究が示したこと

技術と市場の知識の統合を妨げていたのは、部門ごとに異なる「思考世界(thought worlds)」と、組織に定着した製品開発の決まった手順でした。論文は、思考世界の違いが専門知識の統合を妨げる様子を詳しく描き、成功した開発者はこの壁を乗り越えていたと報告しています。主な含意は、イノベーションを改善するにはこの解釈上の壁を正面から扱う必要がある、というものです。

この研究から読み取るべきこと

5つの場面は、どれも同じ事実をPdMとPMMが別の問いで読んでいる場面でした。一方は「どう作り、どう使われるか」を、もう一方は「どう比べられ、どう選ばれるか」を見ています。決定権の線引きは、どちらの読み方を採るかを決めるだけで、二つを統合してはくれません。採用されなかった側の見方は、会議室から消えるだけで、市場からは消えません。役割分担表が機能しにくい理由は「PMMとPdM・マーケ・営業は何が違うのか」でも扱っています。

出典:Deborah Dougherty「Interpretive Barriers to Successful Product Innovation in Large Firms」(Organization Science, 1992)


4. 市場の情報は、中身よりも「届き方」で扱いが変わる

市場の情報がプロダクト側で使われるかどうかは、中身だけでなく、どの経路で、どれくらいの頻度で、誰から届いたかに左右されます。

背景

マーケティング研究者のエリオット・マルツとアジェイ・コーリは1996年、ハイテク機器メーカーのマーケティング部門以外のマネージャー788名を対象に、市場の情報が部門の壁を越えて伝わる過程を調べました。

研究が示したこと

伝達の頻度や形式の度合いは、受け手が感じる情報の質と単純な比例関係にはなく、正式な経路で受け取った情報ほど使われやすい傾向が見られました。また伝達の頻度は、部門間の距離、顧客への共同訪問の有無、送り手の社内での立場、送り手への信頼などと関係していました。

この研究から読み取るべきこと

場面②で失注理由が「一件の要望」に縮むのは、情報の価値が低いからとは限りません。立ち話やチャットで届いた情報は、同じ中身でも判断材料として扱われにくいのです。部門間の距離が遠く、互いへの信頼が育っていなければ、情報が流れる回数そのものが減ります。情報が軽く扱われると感じたとき、疑うべきは相手の姿勢より先に、情報が通ってきた道です。

出典:Elliot Maltz, Ajay K. Kohli「Market Intelligence Dissemination across Functional Boundaries」(Journal of Marketing Research, 1996)


5. 揉め方が変わるチームに共通する、3つの原則

揉め方が変わるチームには、摩擦を早く起こす、どの顧客の話かを揃える、境界を固定しない、という3つの原則が共通しています。

原則①:摩擦は、減らすより早く起こす

文面、発表日、料金プランの場面に共通していたのは、意見の違いが表に出るタイミングの遅さでした。いずれも仕様が固まった後に議論が始まり、どちらかが譲るしかない状態で衝突しています。摩擦のまったくない関係は、健全というより、どちらかが黙っている可能性を疑うべき状態です。

原則②:正しさの前に「どの顧客の話か」を揃える

場面②と⑤のように、二人はしばしば別の顧客を思い浮かべて議論しています。既存ユーザーか、見込み顧客か、失注先か、決裁者か。ここが揃わないまま結論をぶつけても、両者とも自分の見た事実を根拠に譲りません。対立に見えて、実は別々の問いに答えているだけという場面は少なくありません。

原則③:境界は一度決めて終わりにしない

製品開発における部門間連携の研究では、どの程度の連携が必要かは、プロジェクトの段階や不確実性の大きさによって変わると整理されています。新市場に出ていく局面と既存顧客向けの改善を重ねる局面では、PdMとPMMが重なるべき範囲も違います。境界を固定すると、局面が変わった瞬間から線と実態がずれ始めます。

3つの原則は「何をすればよいか」ではなく「どこを見ればよいか」の話です。実際のプロセスへの組み込み方は、組織の規模やフェーズで変わります。

出典:Abbie Griffin, John R. Hauser「Integrating R&D and Marketing: A Review and Analysis of the Literature」(Journal of Product Innovation Management, 1996)


6. まず、自社の足元を点検する3つの問い

問い①:直近のリリースについて、「誰のための機能か」をPdMとPMMが同じ言葉で説明できますか。

問い②:失注理由は、どんな経路と形式で、ロードマップの議論に届いていますか。

「チャットで共有された」程度の答えしか出ないなら、判断の材料として扱われていない可能性があります。

問い③:PdMとPMMの意見が最後に大きく食い違ったのは、開発のどの段階でしたか。

答えが「リリース直前」であれば、揉め事の数ではなく、揉めるタイミングそのものに目を向ける必要があります。

3つのどこで答えに詰まったかが、自社のPMMとPdMの境界が実際にどこで途切れているのかを示しています。


おわりに:「決める人を決める」ことと「揉めなくなる」ことは違う

PMMとPdMの境界が語られるとき、議論はたいてい「最終的に誰が決めるのか」に向かいます。決定権の明確化に意味はあります。ただし、効くのは議論の最後の一歩だけです。

5つの場面は、どれもその手前で起きていました。同じ機能を別の問いで読み、同じ「顧客」で別の人物を思い浮かべている。このずれが残るかぎり、誰が決めても、採用されなかった側の見方は次の会議で形を変えて戻ってきます。

PMMを目指す人にとって、PdMとの摩擦は避けて通れません。そしてその摩擦こそ、プロダクトの内側から見えにくい市場の事実を判断の机に載せる、PMMという職能が必要とされる理由です。

自社では、その事実はどの段階で、どの経路を通って、PdMの机に届いているでしょうか。


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よくある質問(FAQ)

Q. PMMとPdMの違いは何ですか?

A. PdMはプロダクトそのもの(何をどの順で作り、どう使われ続けるか)に、PMMはプロダクトが市場で選ばれる状態(誰に向けてどんな価値として位置づけ、どう語るか)に責任を持つ役割です。定義は明確でも、実務ではリリース文面や料金プランなど、両者の判断が重なる場面が多くあります。

Q. PMMとPdMはどんな場面で揉めやすいですか?

A. リリースノートの文面、失注理由のロードマップへの反映、開発完了日と発表日のずれ、新機能の料金プランへの割り当て、顧客調査の結論の食い違いの5つです。多くは、仕様が固まった後に議論が始まり、どちらかが譲るしかない状態で衝突します。

Q. PMMとPdMの役割分担は、決定権を明確にすれば解決しますか?

A. 決定権の明確化だけでは解決しにくいのが実態です。原因の多くは権限ではなく、部門ごとに同じ事実を別の問いで読んでいることや、市場の情報が判断の場に届く経路にあります。日本PMM市場レポート2026では、届け方に関する組織課題として責任の所在が不明確と回答した企業が44.6%にのぼります(出典:日本PMM市場レポート2026/プロデリア・パートナーズ、n=166)。

Q. PMMはプロダクトロードマップにどこまで関わるべきですか?

A. 関与の深さは事業のフェーズや組織によって異なり、一律の正解はありません。日本PMM市場レポート2026では、自社で特に重視している業務としてプロダクトロードマップへの関与を挙げた回答は17.5%にとどまります(出典:日本PMM市場レポート2026/プロデリア・パートナーズ、n=166)。まず、市場や失注の情報がロードマップの議論に届く経路があるかを確認すべきです。

Q. PdMからPMMへのキャリアチェンジは可能ですか?

A. 可能です。日本PMM市場レポート2026では、自社でPMM的業務を担う人の出身領域としてPdMを挙げた回答が21.1%ありました(出典:日本PMM市場レポート2026/プロデリア・パートナーズ、n=166)。プロダクト理解の深さは強みになる一方、既存ユーザー以外の顧客や失注先の事実を扱えるかが問われます。

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