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PMMとPdM・マーケ・営業は...

  • フレームワーク

2026/9/1 23:48

PMMとPdM・マーケ・営業は何が違うのか——境界は奪うためでなく、動かすために引く

「その機能、うちのPdMがロードマップに入れてます」「いや、市場に出す前提が違うので、まずメッセージング側で検証させてください」「営業にはもう来週出すと約束してしまって」——同じ会議室で、同じプロダクトについて、三者が三様の前提で話している。誰も間違ったことは言っていない。ただ、誰が最初にこの話を持ち込むべきだったのかが、誰にも思い浮かばない。

「結局これは、PMMの仕事なんですか、PdMの仕事なんですか。」

PMM組織診断や個別相談の場で、最も多く受け取る質問のひとつです。「マーケとは何が違うんですか」「営業の資料作成とどこで線を引けばいいんですか」——聞き方は違っても、根っこは同じです。

まっとうな疑問です。そして、この疑問に「PMMは市場と顧客の翻訳者ですから」と役割定義だけで返しても、月曜の朝には同じ会議室で同じ揉め方が再演されます。役割の定義と、境界が揉める瞬間の対処は、別の問題だからです。

この疑問を持つのは、あなたの会社だけではありません。組織としてPMM機能を何らかの形で持つ企業は92%にのぼる一方で、専任の肩書として明確に置かれている企業は28%にとどまります(出典:日本PMM市場レポート2026/プロデリア・パートナーズ、n=166)。多くの組織で、PMMという機能は「誰かが兼務している何か」として存在しており、境界が曖昧なまま運用されているのが実態です。

この記事では、PMMとPdM・マーケティング・営業・CSの境界が具体的にどんな瞬間に揉めるのかを言語化し、その揉め方に共通する構造を取り出します。「誰の仕事を奪うか」という奪い合いの発想では、この構造は見えてきません。境界は、奪うために引くのではなく、事業のフェーズに合わせて動かし続けるために引くものだからです。

ジュニアのPMMやPdM、あるいはこれからPMMという職能を目指すマーケター・営業・CS担当者にとって、この境界の話は「自分の仕事がどこまでか」という不安に直結します。役割の重なりを正しく捉え直すことは、キャリアの土台を組み立てるうえでも欠かせない視点です。


1. そもそも「境界」とは何か

PMMにおける境界とは、複数の職能がまたがる意思決定において「誰が最初に判断するか」を定めた線のことです。

境界は、業務範囲の一覧表ではありません。プロダクト開発、マーケティング、営業、カスタマーサクセスは、それぞれ独立した仕事の集合ではなく、常に重なり合っています。新機能は「何を作るか」であると同時に「誰に何と伝えて売るか」でもあり、価格改定は「いくらにするか」であると同時に「既存顧客にどう説明するか」でもあります。境界とは、この重なりの中で「最初に手を挙げるのは誰か」を決める線です。

PMMという職能が担う領域は、業界でも比較的共通して語られています。市場・顧客インサイトの収集、プロダクトの立ち位置を決めるポジショニング、それを言葉に落とすメッセージング、営業が使える形に翻訳するセールスイネーブルメント——大きくはこの4つです。この4つ自体は特に目新しい話ではありません。

4つの領域は、それぞれ隣に別の職能が立っている

市場・顧客インサイトの収集は、CSが日々受け取っている解約理由や問い合わせ内容と隣り合っています。ポジショニングは、PdMがロードマップの前提として持っている「プロダクトは何のためにあるか」という定義と隣り合っています。メッセージングは、マーケが日々作っている広告コピーやLPの文言と隣り合っています。セールスイネーブルメントは、営業が現場で使っているトークや資料と隣り合っています。PMMの4領域が特別なのは、内容そのものよりも、隣り合う職能が4方向すべてに存在するという配置です。 他の職能の多くは、隣り合う相手が1つか2つに限られます。PMMだけが、常に4方向の境界線を同時に管理する立場に置かれています。

本記事の核心は、この4領域の「定義」ではなく、この4領域が他職能の担当領域と重なる「境界線上」で何が起きているかにあります。

境界線は一度引いたら固定される柵ではありません。事業のフェーズが変わり、組織の人数が変わり、扱う市場が変わるたびに、境界線は動きます。創業期にはPdMが兼務していた仕事が、事業が大きくなるとPMMの専任業務に切り出される。逆に、専任PMMを置いたはずなのに、事業が停滞すると営業が独自にメッセージングを作り始める。境界線が動くこと自体は健全です。問題は、動いたことに誰も気づかず、前提だけが古いまま残ることです。

日本PMM市場レポート2026では、「つくる役割と届ける役割の分担が明確か」という設問に対して、5段階評価の平均は2.4にとどまり、回答者の56%が「明確ではない」側に評価しています(出典:日本PMM市場レポート2026/プロデリア・パートナーズ、n=166)。半数を超える組織で、境界線がどこにあるのか、当事者自身が言語化できていないということです。これは能力の問題ではなく、境界線を「引いた後、動いたら引き直す」という前提を組織として持てていないことの表れだと考えられます。

この状況は、今後さらに切実になっていきます。同調査では、回答企業の61%が今後12〜24ヶ月でPMM体制の新設または増員を予定しています。境界が曖昧なまま人数だけが増えれば、揉める場面の数もそのまま増えることになります。


2. なぜ境界が揉めるのか、3つの理由

心当たりがあるかどうか、以下の3つと照らし合わせてみてください。多くの組織で境界が揉める場面は、この3つのどれかに当てはまります。共通しているのは、いずれも「誰の能力が足りないか」の問題ではなく、「情報や判断がどう流れているか」という構造の問題だという点です。

理由①:「誰の仕事でもない」空白地帯が生まれる

新しい競合が現れた、既存顧客の解約理由が予想と違った、展示会で聞いた顧客の一言が今後の方針に関わりそうだ——こうした情報は、どの部署のKPIにも直結しません。PdMのKPIはロードマップの進捗、営業のKPIは今月の受注、マーケのKPIはリード数です。「これは重要かもしれないが、誰の評価にも紐づかない」という情報は、拾われないまま消えていくか、あるいは複数人が同時に拾って重複対応するかのどちらかになります。

空白地帯は、境界線が引かれていない場所ではなく、境界線が交差する場所に生まれます。日本PMM市場レポート2026では、顧客インサイトが社内で分断していると回答した企業が42.2%にのぼります(出典:日本PMM市場レポート2026/プロデリア・パートナーズ、n=166)。顧客の声そのものは各部署に流れ込んでいても、それが横断的な判断材料としてつながっていない状態です。

理由②:同じ言葉が、部署によって違う意味を持つ

「ポジショニング」という言葉ひとつをとっても、PdMは「プロダクトの機能的な立ち位置」を思い浮かべ、マーケは「広告クリエイティブのトーン」を思い浮かべ、営業は「競合比較表の一行」を思い浮かべることがあります。同じ会議で同じ単語を使いながら、全員が違うものを想像している状態です。この状態では、「PMMがポジショニングを決めます」と宣言しても、聞いた側は自分の理解でその言葉を処理するため、翌週には「言った」「聞いていない」の水掛け論になります。

「メッセージング」も同様です。PMMにとっては顧客の意思決定プロセスに沿って設計された論理構造を指しますが、営業にとっては「トークスクリプトの言い回し」、マーケにとっては「LPのキャッチコピー」を指すことがあります。言葉の定義がずれたまま「メッセージングはPMM主導で」と決めても、営業側は「自分たちのトークは自分たちで決めていい」という理解のまま動き続けます。

理由③:意思決定のタイミングと、担当者の登場タイミングがずれる

もっとも頻発するのがこのパターンです。プロダクトの仕様がほぼ固まった段階でPMMに「そろそろメッセージング作って」と声がかかる。営業に「来月から新プランです」と数字だけが降りてくる。CSに「解約が増えている理由を教えてほしい」と、原因が積み上がったあとで相談が来る。誰が悪いという話ではなく、意思決定に関わるべきタイミングと、実際に声がかかるタイミングが一致していないという、構造の問題です。この構造が変わらない限り、担当者を変えても同じ揉め方が繰り返されます。

このずれは、たいてい下流の職能ほど強く実感します。仕様変更の理由を最後まで知らされないまま「なぜこの機能が今なのか」を顧客に説明する営業、解約が起きてから初めて経緯を知るCS——境界が揉めているように見える場面の多くは、実際には「共有のタイミングが遅い」という一点に集約されます。


3. 「役割分担のルールを作ったのに、また揉める」という事例

背景

多くの組織は、RACI(誰が実行し、誰が承認し、誰に相談し、誰に共有するかを一覧化する手法)のような役割分担のフレームワークを導入します。PMMとPdM・営業・マーケの境界が揉めた経験のある組織ほど、「じゃあ表を作ろう」という発想に行き着きやすい領域です。理由②で触れた「同じ言葉が部署によって違う意味を持つ」という問題を、表にして統一しようという発想は自然なものです。しかし、表を作ること自体が目的化した組織では、しばしば別の問題が発生します。

やったこと(研究が指摘する典型的な失敗)

HBRの調査によれば、100社以上の組織を対象にした研究で、この種のフレームワークが機能しない典型的な誤りが指摘されています。目的をすり合わせる前に役割の割り当てから着手してしまうこと、決定権の一覧を一人の上長が一方的に作ってしまうこと、担当者ごとに同じ役割の言葉を違う意味で受け取っていること、そして土壇場で役職の上下が割り当てられた役割を上書きしてしまうことです。

何が変わったか

役割分担表そのものは、作った瞬間には全員が納得して見えます。しかし運用が始まると、表の外側で起きる「これはどっちが決めるんだっけ」という個別の揉め事には対応できません。表は静的で、現場の意思決定は動的だからです。

PMMとPdM・営業・マーケの境界に当てはめると、この4つの誤りはそのまま再現されます。「まずPMMとPdMで担当領域を線引きしよう」と役割の話から入り、事業として何を優先するのかのすり合わせを後回しにする。経営やマネージャーが一人で「PMMはここまで、営業はここから」と決めてしまい、現場の納得を得ないまま運用が始まる。役職が上の人が土壇場で「今回は自分が決める」と割り込み、せっかく引いた境界線を無効化する——いずれも、日本語の役割分担表を作った経験がある人なら、一度は見た光景のはずです。

この事例から読み取るべきこと

PMMとPdM・マーケ・営業・CSの境界を「誰が何をするか」という一覧表だけで固定しようとすると、同じ失敗を再現します。表を作る前に「そもそも何を最大化したいのか」がチーム間ですり合っていること、役割は固定リストではなく定期的に見直す前提で運用すること——この2点が欠けたまま表だけが独り歩きしている組織は、少なくありません。自社の役割分担表が、最後に見直されたのはいつでしょうか。

出典:Harvard Business Review「What Companies Get Wrong About Decision Rights」


4. PMMという職能が、構造的に境界の摩擦にさらされやすい理由

背景

組織心理学には「役割葛藤(role conflict)」という古くからの研究領域があります。1964年のKahn, Wolfe, Quinn, Snoek, Rosenthalによる古典的研究以降、複数の後続研究が、ある共通した傾向を報告してきました。

やったこと

Milesらの研究(同論文で紹介されているもの)は、ある個人が接点を持つ相手(研究では「役割送信者」と呼ばれます)の所属先が組織内で離れているほど、また接点を持つ相手の顔ぶれが多様であるほど、その個人が経験する役割上の対立が大きくなる、という関係を報告しています。

何が変わったか、ではなく何が確認されたか

この知見をPMMという職能に当てはめると、示唆は単純です。PMMは定義上、プロダクト・マーケティング・営業・CSという、組織内で離れた場所にいる複数の相手と日常的に接点を持つ職能です。境界の摩擦が多いのは、PMMの設計や担当者の能力の問題である以前に、この職能が構造的に役割葛藤へさらされやすい位置に置かれているから、という見方ができます。

この事例から読み取るべきこと

「なぜうちのPMMは板挟みになりやすいのか」という悩みに対して、「その人のコミュニケーション能力の問題」という結論に飛びつく前に、そもそもその職能が組織図のどの位置に置かれているかを疑う価値があります。板挟みになりやすい位置に置いたまま、板挟みに強い人材を探し続けても、根本的な解決にはなりません。

これはジュニアのPMMやPdMほど重く受け止めておきたい視点です。「自分は板挟みに向いていないのかもしれない」と個人の資質の問題として抱え込んでしまう前に、その板挟みが職能の構造から来ているものなのか、それとも自分の動き方から来ているものなのかを、切り分けて考える価値があります。前者であれば、必要なのは個人の忍耐力ではなく、組織側の設計の見直しです。

出典:ResearchGate「Stress and organizational role conflict」


5. PdM・マーケ・営業・CS、揉める場面はそれぞれ違う顔をしている

同じ「境界が揉める」という現象でも、相手が誰かによって現れ方はまったく違います。自社がどの場面に近いか、照らし合わせてみてください。

PdMとの間:「決めたのはどっちか」問題

もっとも典型的なのが、機能の優先順位をめぐる摩擦です。PdMは開発リソースと技術的な実現可能性から優先順位を組み立て、PMMは市場の反応と競合の動きから優先順位を組み立てます。両者の根拠はどちらも正しいのに、結論が食い違う。ここで揉めるのは「どちらの権限が強いか」ではなく、多くの場合「どちらの根拠を先に持ち寄るべきだったか」の順番です。ロードマップがほぼ固まってから市場側の意見をぶつけると、PdMには「今さら」という反応しか返ってきません。

マーケティングとの間:「同じKPIを見ていない」問題

マーケはリード数やCPAという、数えやすい指標を追いかけます。PMMはその手前にある「誰に、なぜ響くメッセージか」という、数えにくい問いを追いかけます。数えやすい指標だけを見ていると、間違った層に大量のリードを集めてしまい、あとから商談化率や解約率という形でツケが回ってきます。境界が揉めるのは、マーケが悪いのでもPMMが正しいのでもなく、追っている指標の時間軸が違うからです。

営業との間:「現場で使える一枚」問題

営業が欲しいのは、今日の商談で使える一枚の資料です。PMMが渡したいのは、その一枚の裏にある「なぜこの訴求が効くのか」という論理です。この間で揉めるのは、PMMが論理を渡すことにこだわりすぎて資料が遅れるか、営業が一枚だけを受け取って論理を理解しないまま現場で崩れるか、のどちらかです。どちらの側にも、相手が何を本当に必要としているかへの理解が欠けています。

CSとの間:「後から知らされる」問題

CSは、プロダクトの変更や新プランの情報を、他のどの職能よりも遅く受け取りがちです。理由は単純で、CSのKPIは「新規の意思決定」とは直接結びつかないからです。しかし解約理由やアップセルの兆しといった一次情報を、実は最も豊富に持っているのもCSです。この情報が意思決定に間に合うタイミングでPMMに戻ってこない限り、同じ理由での解約が繰り返されます。

4つの場面に共通する、もうひとつの見立て

この4つの場面は、表面的にはまったく違う揉め方をしています。しかし、揉める根本原因を辿ると、いずれも「情報や根拠が、意思決定より後に届いている」という一点に行き着きます。PdMとは根拠の持ち寄る順番が、マーケとは指標の時間軸が、営業とは論理の伝わり方が、CSとは共有のタイミングが、それぞれずれています。相手が変わるたびに現象の見た目は変わりますが、構造としては同じ種類のずれが4方向で起きているにすぎません。


6. 境界が揉める場面に共通する、たった1つの構造

ここまでの症状と事例に共通する構造は、実はひとつです。

「誰が担当か」がずれているのではなく、「誰が、いつ、何を前提に判断してよいか」がチームごとにバラバラに前提化されている、という構造です。

PdMは「仕様が固まってからメッセージングの話をすればいい」と前提化し、PMMは「仕様が固まる前に市場の反応を確認したい」と前提化する。マーケは「リード数の目標があるので、とにかく露出を増やしたい」と前提化し、PMMは「間違った層に露出しても解約が増えるだけだ」と前提化する。営業は「今すぐ使える一枚の資料が欲しい」と前提化し、PMMは「一枚の資料の裏にある論理を理解してもらわないと、現場で崩れる」と前提化する。CSは「なぜ自分たちに事前共有がなかったのか」と前提化し、PMMは「CSへの共有は決定の後でいいと思っていた」と前提化する。

それぞれの前提は、単体では間違っていません。 間違っているのは、その前提がチームをまたいですり合わされないまま、それぞれが「自分の前提が常識だ」と思い込んでいる状態です。

境界線を「PMMの担当はここまで、PdMの担当はここから」という面積の取り合いとして引こうとすると、この構造は解決しません。むしろ、境界線を引くべきなのは人と業務の間ではなく、チームをまたぐ判断が発生した瞬間に、誰の前提を先に確認するかという、判断の順番の側です。奪い合いの発想でこの問いに答えは出ません。境界は、事業のフェーズが変わるたびに、この順番を引き直し続けるためのものです。

面積の取り合いとして境界を捉えている組織ほど、新しいメンバーが増えるたびに、あるいは新しい事業領域に手を伸ばすたびに、境界線を最初から引き直す会議が発生します。判断の順番として境界を捉えている組織は、メンバーが変わっても「この種の判断はまずここに聞く」という順番だけが引き継がれるため、境界線そのものを毎回作り直す必要がありません。境界を「誰の持ち物か」ではなく「誰が最初に呼ばれるべきか」で設計しておくことが、組織が大きくなったときの摩耗を減らします。


7. まず、自社の足元を点検する3つの問い

問い①:新しい機能や価格変更が持ち上がったとき、「これはPMMとPdM、どちらが先に判断するか」を、誰かが決めていますか。それとも、声の大きい方が先に動いていますか。

この問いに即答できない組織ほど、意思決定のタイミングと担当者の登場タイミングがずれやすくなります。答えに詰まったということは、境界線が「暗黙のうちに、その場の力関係で決まっている」状態にあるということです。

問い②:直近3ヶ月で、営業やCSから「なぜ事前に知らされなかったのか」と言われた場面は、何回ありましたか。

一度や二度であれば、個別の連絡漏れかもしれません。同じパターンが繰り返されているなら、それは個人の不注意ではなく、情報が意思決定に間に合うタイミングで流れる仕組みそのものが存在しない、という構造の兆候です。

問い③:自社では「PMMがいなくても回る業務」と「PMMがいなくなった瞬間に止まる業務」を、具体的に説明できますか。

これに答えられないということは、PMMという職能が組織の中で何を担っているのかが、PMM本人にも周囲にも、まだ言語化されていないということです。

答えは、ここには書きません。この3つに詰まった箇所が、自社の境界線が実際にどこにあるのかを教えてくれます。


おわりに:「境界を引く」ことと「誰かを締め出す」ことは違う

PMMという職能について語られるとき、「PMMが何を奪うか」という問いが立てられがちです。しかし境界線は、本来、誰かの仕事を奪うために引くものではありません。事業が今どのフェーズにあり、次に何が起きたときに、誰が最初に前提を確認すべきかを、そのつど引き直すために存在します。

境界を引くことを恐れる組織は、結局のところ全員が同じ会議に呼ばれ、全員が同じ資料に目を通し、誰も最初の判断をしないまま時間だけが過ぎていきます。逆に、境界を「奪い合い」の発想で固定しようとする組織は、事業のフェーズが変わった瞬間に、その境界線ごと機能しなくなります。

「決める権利がない」ことと「関わる必要がない」ことは違います。境界線の役割は、後者を減らしながら、前者を明確にすることにあります。

これからPMMを目指すマーケターや営業、CS担当者にとっても、この視点は無関係ではありません。「PMMになれば、あの仕事もこの仕事も自分の裁量になる」と考えているうちは、境界を面積として見ています。「事業のどの局面で、自分が最初に呼ばれる存在になるか」を考え始めたとき、境界の引き方は初めて自分のキャリアの話になります。

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よくある質問(FAQ)

Q. PMMとPdMの違いは何ですか?

A. PMMは市場・顧客に向けて「なぜ売れるか」を設計する役割、PdMはプロダクトそのものの機能・体験を設計する役割です。両者の境界は固定ではなく、事業フェーズによって動きます。機能の優先順位づけひとつをとっても、開発の実現可能性から発想するか、市場の反応から発想するかで根拠が異なるため、どちらの根拠を先に持ち寄るかの順番を決めておくことが重要です。詳細は「PMMとPdMの違いを徹底解説」で解説しています。

Q. PMMとマーケティングの違いは何ですか?

A. マーケティングは主にチャネル・施策の実行とリード獲得を担い、PMMは市場や顧客の構造を読み解いたうえでポジショニングやメッセージングの土台を設計します。マーケが追う指標(リード数・CPAなど)とPMMが見ている問い(誰に、なぜ響くか)は時間軸が異なるため、担当領域が重なる場面ほど事前のすり合わせが重要になります。

Q. PMMと営業の役割分担はどう決めるべきですか?

A. 「誰が資料を作るか」ではなく「意思決定に誰がいつ関わるべきか」で考えるのが出発点です。営業に情報が降りてくるタイミングが遅い組織ほど、現場で使われる資料とPMMが意図した論理がずれ、後から役割分担そのものが揉める傾向があります。

Q. PMMとCS(カスタマーサクセス)の境界線はどこにありますか?

A. 明確な業務範囲の線というより、「解約や顧客の声をどの段階でPMMに共有するか」という情報の流れの設計が実質的な境界線になります。CSは解約理由やアップセルの兆しといった一次情報を最も豊富に持つ立場にありながら、事後共有が常態化している組織は、この境界が機能していないサインです。

Q. PMMの役割分担が曖昧なまま導入するとどうなりますか?

A. 「誰の仕事でもない」空白地帯が生まれ、重要な情報が拾われないか、複数部署が重複して対応する状態になります。日本PMM市場レポート2026では、組織課題として責任の所在が不明確と回答した企業が44.6%、顧客インサイトが社内で分断していると回答した企業が42.2%にのぼります(出典:日本PMM市場レポート2026/プロデリア・パートナーズ、n=166)。

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