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2026/4/15 00:28

"いい訴求コピー"を書いているのに売れない時、PMMが疑うべきたった一つのこと

ターゲットも絞った。訴求軸も練った。ランディングページのコピーも何度も書き直した。A/Bテストも回した。——なのに、数字が動かない。

PMMの仕事をしていると、必ずこの壁にぶつかる。メッセージの質に問題があるようには思えない。チーム内のレビューも通っている。言葉としては「悪くない」。むしろ、過去に自分が書いた中では「良い方」だと思っている。

それでも、刺さらない。

この壁にぶつかったとき、多くのPMMは「もっと良い言葉を探そう」とする。もっと鋭い表現を。もっと具体的なベネフィットを。もっと印象に残るキャッチコピーを。——しかし、この方向で努力を重ねても、たいていの場合、数字は動かない。

なぜか。

問題はコピーの質ではないからだ。問題は、そのコピーが、相手の"今いる場所"に向けて書かれていないからだ。

本記事では、「良いメッセージなのに刺さらない」という壁の本当の正体と、そこを抜け出すためにPMMが最初に捨てるべき思い込みについて書く。

1. 「良いコピー=売れるコピー」という思い込み

コピーの質を上げても、数字は動かない時がある

マーケティングやコピーライティングの本を読むと、「良いコピーとはこういうものだ」という定義がたくさん出てくる。具体的である。ベネフィットが明確である。顧客の言葉で書かれている。読み手の頭の中の会話に入っていく。——どれも正しい。どれも重要だ。

しかし、こうした教科書的な「良いコピー」の条件をすべて満たしていても、刺さらないことがある。いや、「ある」どころではない。PMMとして現場にいると、むしろこれが普通だと感じる瞬間がある。

このとき、「コピーがまだ足りないのだ」と考えるのは自然な反応だ。自分の書き方に問題がある、もっと磨けば届くはずだ、と。

でも、そうではない。

問題は「言葉の質」ではなく「届ける先」にある

同じコピーでも、ある相手には刺さり、別の相手にはまったく響かない。これはコピーの質が変わったわけではない。受け手の状態が違うのだ。

たとえば、あなたが「導入3ヶ月で業務効率40%改善」というコピーを書いたとする。これは悪くない。具体的な数字があり、ベネフィットが明確で、短く、印象に残る。

しかしこのコピーは、「そもそも自分たちの業務が非効率だと気づいていない会社」には刺さらない。彼らにとって、今の業務は「普通」であり、「改善すべき何か」ではないからだ。どれだけ良い改善策を見せられても、「困ってないので」で終わる。

一方、「競合Aと競合Bで迷っていて、決め手を探している会社」にも、このコピーは強くは刺さらない。彼らが今知りたいのは「どの会社を選べば良いか」であって、「効率が改善するかどうか」は、もう分かっている前提だからだ。

このコピーが最も刺さるのは、「業務が非効率だと気づいていて、何か手を打ちたいが、まだ具体的な選択肢を検討していない」という、特定の状態にいる相手だけだ。

つまり、良いコピーとは「良い言葉」のことではない。「相手の状態に合った言葉」のことだ。

2. PMMが疑うべき、たった一つのこと

良いメッセージが刺さらないとき、PMMが最初に疑うべきは、言葉の質ではない。

「このメッセージは、相手が今いる場所に向けて書かれているか?」

この問いが、すべての出発点になる。

顧客には「段階」がある

当たり前のことを言うようだが、顧客は一直線に「知らない」から「買う」にジャンプしない。その間には、いくつもの心理的な状態がある。

まだ課題に気づいていない段階。気づいているが、優先度が低いと思っている段階。解決したいと思い始めた段階。具体的に選択肢を比較している段階。導入を決めたが、社内稟議で詰まっている段階。導入したが、まだ価値を実感できていない段階。価値を実感して、もっと活用したい段階。——これらは全部、違う場所だ。

そして、場所が違えば、響く言葉も違う

「まだ課題に気づいていない人」に対して必要なのは、解決策の魅力ではない。「放置したらどうなるか」を見せることだ。「比較で迷っている人」に必要なのは、ベネフィットの羅列ではない。「何を基準に選べばいいか」を示すことだ。「導入直後の人」に必要なのは、新しい機能の案内ではない。「まずこれを試してください」という小さな一歩だ。

同じプロダクトでも、相手の場所によって、送るべきメッセージはまったく違う。そして、場所を間違えたメッセージは、どれだけ言葉として優れていても、届かない。

多くのPMMが見ているのは「自社の都合」

ここで厳しいことを書く。

多くのPMMが書くメッセージは、実は「顧客の今いる場所」から出発していない。自社の都合から出発している。

今期の売上目標がある。だから、新規リード獲得のコピーを書く。新機能をリリースした。だから、その機能の良さを伝えるメッセージを書く。競合が新しいキャンペーンを始めた。だから、対抗するメッセージを書く。——これらはすべて、自社の事情が起点になっている。顧客が今どこにいるかは、考慮の外にある。

だから刺さらない。

顧客は、あなたの今期目標のために買うわけではない。あなたの新機能リリースに合わせて検討を始めるわけでもない。顧客は、自分のタイミングで、自分の場所にいる。PMMの仕事は、その場所に合わせて言葉を届けることだ。自社のタイミングで書いた言葉を、無理やり相手に押し付けることではない。

3. よくある「場所のミスマッチ」3パターン

現場でよく見るミスマッチを、いくつか紹介する。自分の仕事に心当たりがないか、照らし合わせてみてほしい。

パターン①:まだ課題に気づいていない相手に、比較表を見せる

これは最も多いミスだ。新規リード獲得のために、プロダクトの比較表や機能一覧を用意する。しかし、そもそも「そういう課題を解決したい」と思っていない相手には、比較表は意味を持たない。何の比較をしているのか理解できないからだ。

「うちには関係なさそう」で終わる。

必要なのは、比較表を見せる前に、「あなたの会社が今のままだと、半年後にこういう状態になる」という現実を描くことだ。課題を自覚してもらうのが先。比較はその後の話だ。

パターン②:検討の途中にいる相手に、ベネフィットを重ねる

すでに選択肢をいくつか比較している相手に対して、「こんなに良いことがあります」というベネフィットを重ねても、響かない。彼らはもう「良いこと」は分かっている。問題はそこではない。

彼らが知りたいのは、「なぜこの選択肢を選ぶべきか、他ではなく」という判断基準だ。ベネフィットの量ではなく、選ぶ理由の鋭さがほしい。

ここで汎用的な魅力を語り続けると、「どこも同じに見える」と言われて終わる。

パターン③:導入済みの顧客に、新規向けのメッセージを送り続ける

これも意外と多い。既存顧客に送られてくるメルマガが、「新しくプロダクトを検討する人向け」の内容ばかり、というケース。

導入済みの顧客が知りたいのは、「このプロダクトをもっと活用するにはどうすればいいか」「自分たちが見落としている使い方はないか」だ。新規向けのメッセージは、彼らにとってはただのノイズで、開封率を下げていく。

既存顧客を"使い続けるファン"に変えることもPMMの仕事だが、そのためには、彼らの今いる場所に合わせたメッセージが必要になる。


この3つに共通するのは、「送り手が、受け手の場所を見ていない」という構造だ。良いコピーかどうかは、ここの手前の問題でしかない。

4. 自分のメッセージを点検する、3つの素朴な問い

では、自分が今書いているメッセージが「相手の場所」に合っているかを、どう確かめればいいか。大げさなフレームワークを持ち出す必要はない。次の3つの問いに、具体的に答えられるかを見てほしい。

問い①:このメッセージは、誰のどんな状態に向けて書かれているか

「BtoB SaaSのマーケ担当」のような曖昧な答えではなく、心理的な状態まで含めて一文で言えるか。たとえば「自社のリード獲得数が頭打ちになり、新しい手を打つ必要があると感じているが、何から始めればいいか分からない人」というレベルで。

ここが曖昧なまま書かれたメッセージは、たいていの場合、どこにも刺さらない。

問い②:その人が、このメッセージを読んだ次の一手は何か

読んだ後に、読み手が次にどんな行動を取ることを想定しているか。資料請求か、もっと詳しい記事を読むことか、社内で議題にあげることか、デモを申し込むことか。

「次の一手」が曖昧なメッセージは、読み手にとって「で、どうすればいいの?」という迷子感を残す。届いても、動きにつながらない。

問い③:同じ業界の別の相手に、このメッセージをそのまま送れるか

もし「そのまま送れる」と思うなら、それは誰にも向けて書かれていないメッセージだ。具体的な相手の状態に合わせて書かれたメッセージは、その状態にいない人には合わない。合わないことが、メッセージの強さの証拠でもある。

万能に聞こえる言葉は、たいてい何にも届かない。


この3つの問いに具体的に答えられないときは、言葉を磨く前に、誰のどんな状態に向けて書いているのかを、もう一度組み立て直したほうがいい。それが、遠回りに見えて、一番早い。

5. PMMの仕事は「書く」前にある

メッセージが刺さらない壁を乗り越えるために必要なのは、コピーライティングのスキルではない。相手の「今いる場所」を読む力だ。

そしてこれは、PMMの仕事の本質に直結している。

PMMは、CV率を上げる人ではない。キャッチコピーを磨く人でもない。「まだ買えない場所にいる人を、買える場所まで連れていく」人であり、「買った人を、満足し続ける場所にとどめる」人だ。そのためには、まず相手が今どこにいるかを正確に読む必要がある。どこにいるか分からないまま書かれた言葉は、どれだけ磨いても、届かない。

メッセージが刺さらないとき、最初に疑うべきは言葉ではない。相手の場所を、自分が本当に見えているかだ。

良いPMMは、言葉を磨く前に、場所を見る。場所が見えていれば、言葉は後から自然に決まってくる。場所が見えていなければ、どれだけ言葉を磨いても、遠くには届かない。

PMMの仕事は、書く前にある。


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